米食品医薬品局(FDA)は、第VIII因子インヒビターのない血友病A(先天性第VIII因子欠乏症)または第IX因子インヒビターのない血友病B(先天性第IX因子欠乏症)の12歳以上の成人および青少年患者において、出血エピソードの頻度を予防・軽減する定期予防療法として米製薬大手ファイザー(Pfizer Inc.)の「Hympavzi(一般名:marstacimab-hncq、マルスタシマブ)」を承認した。今回の決定は、米国における抗組織因子経路インヒビター(抗TFPI)製剤の初の承認であり、薬液充填済みのオートインジェクターペン(またはプレフィルドシリンジ)を用いて週1回皮下投与する初の血友病治療薬の登場を意味する。

血友病Aおよび血友病Bは、血液を固めるのに必要な凝固第VIII因子または第IX因子が先天的に不足することで生じる希少な遺伝性出血性疾患であり、米国の約3万3,000人を含む全世界で80万人以上が罹患している。これまで長年にわたり、標準的な定期予防療法では週に数回の時間を要する凝固因子製剤の静脈内輸注(点滴)が必要とされ、患者や家族にとって大きな身体的・時間的負担となってきた。

第3相BASIS臨床試験で年間出血率の大幅な低減を実証

不足している凝固因子を直接補充する従来薬とは異なり、Hympavziは血液凝固の開始を抑制する天然の抗凝固タンパク質「組織因子経路インヒビター(TFPI)」のKunitzドメイン2を標的とするヒトモノクローナルIgG1抗体である。TFPIの働きを抑えることで、第VIII因子と第IX因子のどちらが欠乏しているかにかかわらず外因系凝固経路を通じたトロンビン生成を促進する。そのため体重に応じた複雑な用量調整や溶解作業が不要となり、初回300mgの負荷投与後は週1回150mgの固定用量を皮下投与するだけで済む。

FDAの承認は、標準的な凝固因子製剤による6カ月間の観察期間に続いて12カ月間の投与を行った第3相ピボタル試験「BASIS」の結果に基づいている。同試験に参加した116人の成人・青少年患者のうち、以前に出血時補充療法(オンデマンド療法)を受けていた群では、治療を要する年間出血率(ABR)が平均38.00回から3.18回へと92%減少した。また、従来の定期的な凝固因子静脈投与から切り替えた患者群でも、平均年間出血率が7.85回から5.08回へと35%減少し、非劣性および優越性が確認された。

“Hympavziの承認は血友病Aおよび血友病Bと共に生きる人々にとって意義深い前進であり、週1回のシンプルな皮下投与オートインジェクターペンを通じて効果的な出血予防を提供します。” — アーミル・マリク(ファイザー 米国最高コマーシャル責任者兼エグゼクティブ・バイスプレジデント)

遺伝子治療薬に続くファイザーの血友病ポートフォリオ拡充

専門医らは、ロシュの二重特異性抗体「ヘムライブラ(エミシズマブ)」が血友病Aの皮下予防療法を大きく変革した一方で、米国の血友病B患者にはこれまで同等の非因子系皮下投与薬が存在しなかったと指摘する。FDA医薬品評価研究センター(CDER)も、Hympavziのペン型デバイスが投与準備の手間を最小限に抑え、自宅での迅速な自己注射を可能にする点を高く評価した。

ファイザーにとってHympavziの承認は、今年4月にFDAから認可された中等症〜重症の成人血友病B向け1回投与型遺伝子治療薬「Beqvez(フィダナコジーン・エラパルボベク)」に続く、今年の血友病領域における2つ目の大きなマイルストーンとなる。マルスタシマブは欧州医薬品庁(EMA)でも承認審査が進んでおり、先月には医薬品委員会(CHMP)が承認勧告を採択したほか、12歳未満の小児患者やインヒビター保有患者を対象とした追加の第3相試験も進行している。

Frequently Asked Questions

ファイザーの「Hympavzi」は従来の血友病治療薬とどのように作用機序が異なりますか?

不足している凝固第VIII因子や第IX因子を静脈注射で直接補充するのではなく、血液凝固のブレーキ役である組織因子経路インヒビター(TFPI)を阻害するモノクローナル抗体として働き、本来の止血バランスを回復させます。

今回のFDA承認で「Hympavzi」の投与対象となるのはどのような患者ですか?

第VIII因子インヒビターのない血友病A、または第IX因子インヒビターのない血友病Bと診断された12歳以上の成人および青少年患者における出血予防が対象です。

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