フランスのミシェル・バルニエ新首相は1日、国民議会(下院)で所信表明演説を行い、危機的水準に達した国家財政を立て直すため、総額600億ユーロ(約9兆6000億円)規模の財政健全化策を断行すると表明しました。総選挙後の長期にわたる政治空白を経てマクロン大統領から任命された保守派の重鎮は、財政再建を喫緊の国家的責務と位置づけました。

バルニエ政権が示した工程表によると、現在6%を超えると見込まれる公的財政赤字の対GDP比を2025年までに5%へと引き下げる計画です。最終的には欧州連合(EU)の財政規律が定める上限基準の3%を2029年までに達成することを目指しており、前政権の計画からは2年の先送りとなります。

歳出削減400億ユーロと大企業への限定的増税

財政調整の約3分の2にあたる約400億ユーロは、各省庁の事業予算、医療保険制度、地方自治体向け交付金の削減など徹底した歳出見直しによって捻出します。残る200億ユーロは、記録的利益を上げた大企業に対する一時的な特別課税や、超富裕層に対する所得課税の強化によって調達します。

バルニエ氏は演説の中で、一般の中間層や中小企業への増税は回避すると確約し、負担の公平性を維持する方針を強調しました。さらに、世論の反発が根強いマクロン政権下の年金改革法についても、重労働従事者への配慮など一部条項の修正協議に応じる柔軟姿勢を示しました。

“Our colossal national debt is a sword of Damocles hanging over the head of our nation. Restoring fiscal control is not a partisan choice; it is an urgent national necessity.” — ミシェル・バルニエ、フランス共和国首相

議会多数派欠如と突きつけられた内閣不信任の脅威

しかし、法案の成立に向けた議会運営は極めて険しい道のりです。与党中道連合と右派・共和党を合わせた勢力は全577議席の過半数に遠く及ばず、少数派内閣として発足しています。左派野党連合「新人民戦線」はバルニエ氏の演説直後、内閣不信任決議案を速やかに提出すると宣言しました。

これにより政権の命運は、マリーヌ・ルペン氏率いる極右「国民連合(RN)」の対応に握られることになりました。ルペン氏は現時点で即時の内閣打倒には動かない構えを示しているものの、予算案の個別の条項を厳しく審査すると警告しており、秋の議会審議は緊迫が続きます。

Frequently Asked Questions

バルニエ首相が提示した600億ユーロの財政調整策の内訳はどうなっていますか?

公的歳出の削減が約400億ユーロ、大企業や富裕層を対象とした特別増税が約200億ユーロとなっています。

フランス政府が掲げる財政赤字削減の目標数値と期限は何ですか?

2025年に赤字をGDP比5%に抑え、2029年までにEU基準である3%未満へ回復させることを目指しています。

Sources

ミシェル・バルニエ フランス政治 国民議会 財政赤字 緊縮財政 マクロン大統領 欧州連合