多国籍自動車大手ステランティスは、英国政府が導入した「ゼロエミッション車(ZEV)義務付け制度」の目標値が実態にそぐわないとして、規制の緩和や購入補助金の支給が行われない場合、英国内での商用バン生産から全面撤退する可能性があると厳重に警告しました。この警告により、エルズミアポートとルートンの工場で働く数千人の雇用が危機に直面しています。
英国の現行制度では、自動車メーカーは2024年に販売する小型商用バンの10%、乗用車の22%をゼロエミッション車にすることが義務付けられています。この比率は段階的に引き上げられ、2030年にはバンで70%に達する計画です。目標を達成できない場合、基準を超過したエンジン車1台につき1万5000ポンド(約280万円)の巨額罰金が科されます。
義務付け目標と商用EV需要低迷の乖離
ステランティスはエルズミアポート工場に1億ポンド以上を投資し、英国初の電気商用バン専用工場へと転換させました。しかし、商用EVの車両価格の高さや急速充電インフラの不足を背景に、物流事業者や一般事業者の買い控えが続いています。
ステランティスUKのマネージングディレクターであるマリア・グラツィア・ダヴィーノ氏は、クオータ達成のために過剰な値引き販売を強いられ、ディーゼル車に高額な罰金を科されるビジネスモデルは維持不可能であると訴えました。
“The current ZEV mandate demands market share levels that natural consumer demand cannot support without urgent government incentives. Without flexibility, domestic production is in jeopardy.”
ボクスホール工場の将来と問われる英産業政策
英自動車工業会(SMMT)もこの懸念を後押ししており、今年上半期の電気バンの販売比率がわずか5.1%にとどまり、法定目標の約半分にすぎない実態を公表しました。業界は国内生産を守るための柔軟な規制運用を求めています。
英運輸省およびビジネス・通商省はメーカー各社と継続的な対話を行っていると説明しています。しかし、2030年のガソリン車新車販売禁止の復活を公約に掲げるスターマー政権にとって、環境目標と製造業の維持という二律背反の舵取りが迫られています。




Comments (0)
Log in to join the discussion.